モルトウイスキーの造り方(1)製麦・麦芽をつくる

モルトを発芽、乾燥

ウイスキーの場合、原料は穀物でバーボンやカナディアンなど、ウイスキーの種類によってトウモロコシやライ麦、小麦など使われる原料の構成は違ってきますが、どの種類のウイスキーにも共通するのは大麦麦芽。むしろモルトウイスキーのように、単体の穀物から蒸留されるウイスキーのほうが稀で、ほとんどの場合複数の穀物が原料となります。

なぜ大麦麦芽だけが必要不可欠の原料なのかといえば、穀物に含まれるたんぱく質をアルコール化するためには、たんぱく質を糖に変える必要があるからです。大麦は麦芽にすることで、糖化酵素がはたらきはじめ、でんぷん質を糖に、たんぱく質アミノ酸に変化させるのです。

主体となる穀物が違っていても、ある程度の割合で大麦麦芽が混入されるのはこのためで、あらゆるウイスキーづくりに大麦麦芽は不可欠な原料なのです。

それでは製麦の手順を紹介しますが、これはあくまで昔からの伝統的な方法です。現在ではモルトづくりを蒸留所で行うところは極めて少なく、モルトスターと呼ばれる専門業者に外注するのが一般的です。その際に、麦の種類や乾燥方法、ピートを焚き込むタイミング・時間などを支持したレシピを渡し、オーダーメイドによる麦芽をつくっているの一般的です。

製麦の前に

8月頃に収穫された大麦は、すぐには発芽しないので休眠期間として2~3ヶ月保管されます。収穫したばかりの大麦の含水率は16~20%くらい。さらに水分が13%くらいになるまで乾燥させます。その間に粒の大きさにより2、3段階に選り分けられ均等な大きさに揃えられ、発芽性能や寄生虫の検査等も行われます。

 

 

 

麦芽の製造工程

1)浸麦―steeping―

まずは大麦を水に浸して充分に水を吸わせ、発芽を促します。大麦には二条大麦と六条大麦がありますが、スコッチにはでんぷん質が多く、糖化しやすい二条大麦が使われます。この時に使う水にも気を配り、蒸留所独自の仕込み水が使われます。

水を入れては抜いて空気にさらす、という作業を2~3日続けることにより発芽の条件が整い、そして小さな芽が出たら発芽室へと移動させます.。

 

 

2)発芽―germination―

伝統的な方法では、ここで充分に水を吸った大麦を低温多湿な床の上に約20cmの厚さに広げて、4~6時間おきに木製のシャベルで攪拌させ空気に触れさせながら繰り返し、5~7日おいて発芽させます。

これは発芽を均一に進行させるためと、伸びた根が絡まないようにするためで、フロアモルティングと呼ばれます。(外注の場合、浸麦が済むと大麦は、発芽室に移され細かい管理のもとで発芽させられます。

攪拌にはドラム式やボックス式に大麦を入れ自動的に行われる方法とありますが、モルトスターの間では、低コストで大量生産が可能なタワー式が主流となっています。大手モルトスターでは国内だけでなく海外の需要が多く、日本にも輸出されています。)

フロアモルティング

現在でもこの手作業の方法を採っているのは、ハイランドパーク蒸留所、ボウモア蒸留所、ラフロイグ蒸留所、スプリングバンク蒸留所、バルヴェニー蒸留所の5つのみです。

 

 

3)乾燥―kilning―

発芽がある程度進行したら、今度はその進行を止める必要があります。大麦は発芽することにより糖化酵素のはたらきで発酵可能な麦芽(モルト)になりますが、あまり発芽が進むと逆に糖分が養分として使われ始め失ってしまうのです。そのために発芽がある程度進んだ段階で麦芽を乾燥させる必要があるのです。

麦芽を乾燥塔(キルン)に移し、下からピート(泥炭)や石炭を焚き、その熱風により乾燥させます。この場合水分を4~5%くらいまで一気に下げることによって、芽の成長を止めることができます。

スコッチウイスキー特有のスモーキーフレーバーは、このときに焚き込まれた煙によるものです。そして再度水分を吸収しないように、大麦の根の部分を取り除きます。この根は家畜の餌などに利用されます。製麦はこれで完了、香ばしい乾燥麦芽(モルト)の完成です。

 

ピート(泥炭)とは?

ピートは、コケやアシ、シダなどさまざまな植物が堆積し炭化し、何百年もかけて炭化したものです。その中でも主成分となるのがヘザーという植物です。荒涼とした大地に一面に咲くヘザーはとてもポピュラーな植物(ヒースとも呼ばれる)で、スコッチのなかには、この花を思わせる香りを持つ銘柄もあります。

 

 

麦芽を乾燥させる作業を行うのがキルンという施設ですが、上部は細かい網の目上になっている麦芽を広げて敷く部屋になっており、中央部は燃料を焚く燃焼炉が設置され、四方から熱風を麦芽が敷かれた部屋に送り込み水分を飛ばします。

この時煙が麦芽の間を通りそのまま外へ出て行くように、天井は高くて幅が狭く、サイドには大きな通気口があります。とんがり屋根が印象的で寺院を思わせる姿のキルンはウイスキー蒸留所のシンボルでもありますが、モルティングの外部委託、機械化により実際に使用している蒸留所は徐々に少なくなっています。

 

 

 

ウイスキーの香りの種類

スモークの香り

乾燥時に焚く燃料の煙によるもの。燃料はピートだけでなく、無煙炭を合わせ炊くのが一般的。ピートを焚くタイミングや時間によって、香りの強さ、性格が変わる。このスモーク香は、スコッチウイスキーのひとつの特徴だが、好き嫌いが分かれる要素でもある。最近では上品できつくないピート香が主流になりつつある。

ヘザーの香り

スコットランドで採れるピートは、ヘザーが主成分。ピート香とともに必然的にヘザーの香りも麦芽に添加される。1960年代まで、ピートの上にヘザーの枝をのせ燃やしていた。また、ピート層を通過した仕込み水を使うことでヘザーの香りが強くなることもある。

海の香り

海の近くに蒸留所がある場合、スコッチのなかに海のような香りがする場合がある。海から運ばれてくる風を、長い年月の間に樽が吸収してしまうとも、海藻が含まれているピートを炊くことによって麦芽に添加されるともいわれているが、本当のところ原因はわかっていない。